映像 1:10
路地
Cannes — Rue Meynadier
カンヌの旧市街、クレープ屋の前の路地。 同じ場所に留まって、カメラを回し続けた。
午後の光が、路地を照らしている。 人は影の中から歩いてきて、その光の中を通り、また影の中へ消えていく。 まるで、袖から舞台に出てくる役者のように。
スポットライトを浴びるのは、ほんの数秒。 買い物袋を提げた女性が、向こうから来た友人と頬を寄せて挨拶をする。 二言、三言。笑って、それぞれの袖へ去っていく。 すると次の人が、また光の中に入ってくる。
誰も台本を持っていない。誰も主役を決めていない。 それでも光の中に入った瞬間、その人はちゃんと、その人自身の物語の主役として映し出される。
僕は同じ場所に留まって、一人一人の人生のストーリーを、少しだけ覗き見ている。 光が当たっているのは数秒でも、その人の物語は、フレームの外でずっと続いている。
一人一人が、かけがえのない存在で。 一人一人に、僕の知らない深いストーリーがある。 この路地は、それを思い出させてくれる舞台だ。